ベンチャーを立ち上げて1年(とちょっと)なので、ファクトベースでここまでを振り返ってみる


皆さん、もはや1月も過ぎ去ったという時期ではありますが、明けましておめでとうございます。ハバタクの長井です。今年もよろしくお願い申し上げます。
新年の抱負を兼ねてこのエントリーを書くのですが、たまたま「一年前(創業したてのころ)にどんな資料を作っていたかな」とDropboxを掘り返してみたら面白い資料が出てきたので、そこから話を始めようと思います。
我々と同じくベンチャー企業を経営されている方、経営者の先輩方、これから立ち上げようとしている方、あるいは興味がある方に、ちょっとでもお役にたてる情報や「あるある!」という共感をご提供できれば幸いです。
さて、見つけた資料は2011年の事業計画に関するものです。
もはや懐かしいというか、2011年を終えたいまの地点から見返すと「こんなこと考えてたんだ…」と非常に興味深い気持ちになりました。
以下の記事ではまず、
  • ファクトとして何を発見したか
  • そこからいま思うこと
の2点を書いていこうと思います。
ファクト1: 当初の予定通り実現したビジネスは全体の14%
「この1年はこんなことをやっていこう」と当初計画していた項目を見てみると、実際には実現に至っていないものが多くありました。数えてみると、全体で22個あった項目のうち実現したのはわずか3個。成功確率は13.6%という数字でした。一般的にみるとかなり低い数字と言わざるを得ません。
もちろん昨年は3.11の影響も少なからずありましたし、設立間もないベンチャーなんてそんなもんだろう、と言われればそうなのかもしれませんが、改めて振り返るとなかなかすごい数字です。少なくとも当時この数字を知っていたら、一年前の私は起業を後悔したかもしれません(笑)
では企業としての業績はどうだったのかというと、むしろ予想に反して収支はほぼトントンでした。少なくとも計画比で86%のビジネスを新規開拓できている計算になります。一年目は初期投資もいくらかかかりますし、起業した月にさっそくデンマークへの視察に出かけたりしていたのでさすがに累積赤字を免れないと思っていただけに、これは驚きでした。
ファクトから思うこと1: 計画(とくに半年以上の長期計画)に時間をかけるべきではない。変化を乗りこなせ
もちろん計画は大事です。しかし3.11がまさに象徴したように、外部環境の急激な変化は今後も避けられないと思います。これには天災も含まれますが、その他にもアジアの国々の政治的・経済的な動向、国の財政状況、放射線リスクなど、可能性を挙げれば数えきれないほどです。
そのたびに綿密な計画を立てるのに腐心するくらいであれば、その変化を乗りこなすだけのマインドセットとスキルと体力をつけることに専心すべき、と考えます。
またポジティブな意味でも、魅力的な人に会ったり新しいことを知ったりするたびに、実際にこの計画は更新されていきほぼ原形をとどめないくらいになりました。事業内容も毎週変わっていくありさまだったので、半年ほどは正式な会社案内が作れなかったほどです(その後、気鋭のデザインユニットminnaさんにとても素敵な会社案内をつくっていただきました)。月並みな言葉ですが「計画も何も、やってみなければ分からない」のです。逆に言うと、「やってみる」ためにはもとの計画をあっさりかなぐり捨てるくらいの気概が何より必要だと感じました。
ファクト2: 現在の事業の柱である「和僑プロジェクト」は1年以上前倒しで実現
世界にハバタク冒険者を増やす。」という弊社のスローガンを先頭切って推進する「和僑プロジェクト」ですが、当時の資料を見返すと2012年以降に実現したいアイデアとして描かれていました。弊社の事業構想マップは、横軸に「手堅く⇔チャレンジ」、縦軸に「草の根的」⇔「世の中を驚かす」というマトリクスで組まれているのですが、そのもっとも右上(つまりチャレンジングかつ世の中へインパクトを与えうる)に位置していたのが和僑プロジェクトだったのです。

ところが、2011年の前半にはメンバーがそれぞれアジアの新興国を回り、ビジネスや教育の現場を目の当たりにしてきたことで急速に和僑プロジェクト構想が盛り上がってきました。「成長市場で圧倒的な原体験を得て成長する」「現地の人々と価値を共創する」「次世代のロールモデルとして日本の教育現場に還元する」という和僑ビジョンが構築され、弊社の全社ビジョンに組み込まれた瞬間、「これは一刻も早くリリースしよう」ということになり、そこからはあっという間でした。
第一弾となったCo-Creation Journey in Vietnamでは弊社丑田がオーガナイザーとなりましたが、そのほか多くの方にご協力いただきプログラムの設計や現地コーディネートなどが進んでいきました。結果として参加者の約半数が実際に事業化に向けて動き出すという、非常にメモリアルな旅となりました。
ファクトから思うこと2: 妄想して、語ろう。妄想はビジョンを豊かにし、ビジョンは人を惹きつける
資料では格好よく「構想」なんて言葉を使っていましたが、このマップは要するに妄想(言い換えれば夢)のかたまりです。でも、この妄想が大事だと思うのです。妄想をシェアし、語り合うことで「自分たちはどっちに向かうんだっけ」というベクトル合わせが起こり、ビジョンを強化することにつながります。さらに、強烈なビジョンは会社の境界を飛び越えてさまざまな人を巻き込む力をもっています。前述のCo-Creation Journeyしかり、弊社の事業の多くは社外の方々とのコラボレーションで成り立っていることを考えると、すべての出発点は妄想にあり、とさえ言えそうです。
一足飛びにチャレンジすることはそれなりにリスクもありますし、もちろん目の前の仕事も着実に積み上げるべきです。ただ和僑プロジェクトをいち早く立ち上げてよかったなと思うのは、一年前には想像もつかなかった新しい地平が見えているということです。
資料の絵がまさに示している通り、一年前の私たちの想像力の限界は和僑プロジェクトでした。いまは、ベトナム事業所の開設も含めて当初の想定をはるかにこえたスケールで事業が展開し始めています。一年後はどんな地平が見えているのか、いまから本当に楽しみにしています。
ここまで、一年前に弊社が作った資料を見返しながら、思うところを述べました。
これらを踏まえて今年私自身が特に注力したいポイントをいくつか挙げてみます。
アクション1: 稼働時間の50%を”Education 3.0″のR&Dに活用する
まず「稼働の50%」という箇所から説明しますと、ハバタクでは「必要な収益は稼働時間の半分で稼ぎ、もう半分はビジョン達成のための自由な活動に使う」と決めています。これは私たちが、単純にその仕事がおカネになるかならないか、だけではなく、感できるかどうか、も同じくらい重要と考えているゆえのポリシーでもあります。それに加えて、ノンプロフィットの世界でも幅広く活動することで得られる知見があったり、魅力的な人に出会えたりといったメリットも現実的に存在します。
次にR&Dというところですが、前述のとおりベンチャー企業の事業展開においては成功確率の高さで案件を追い求めるより試行錯誤のサイクルを多く回すことが肝要だと考えています。これはビジネス的に、という意味もありますが、何より「次世代の教育のレバレッジポイントはどこなのか」を弊社の視点からに模索していきたいというモチベーションが大きいです。今年はすでに素敵な方々と面白い案件をスタートできており、弊社としては”Education 3.0 Project”の名のもとにこれらをグイグイ進めていきたいなと考えています。詳細は追ってお伝えできればと思いますが、具体的には
  • 学童保育 × シニアのサステナビリティ塾(w/ サス塾様)
  • 図書館を、世代を超えた新しい学びの場に(w/ プレカレッジLit様)
  • プレイ人口世界一のボードゲームで数理的能力・グローバル視点を身に付ける(w/ 神田須田教育開発株式会社様)
  • 日本の高校生とベトナム人大学生との共同調べ学習(w/ 田園調布雙葉学園様)
  • プレゼンバトル形式を用いた刺激的読書会(w/ 慶應義塾大学御園生くん
など、国内でも最前線の取り組みに関わっていきます。また、先日開催した”Education 3.0 Conference“にも多くの方にお越しいただき、さらに新たなアイデアも生まれつつあります。こちらに関しても実現へのアクションを、想いをもった方々と一緒に進めていきたいと考えています。
さらに、弊社の和僑プロジェクトとのクロスボーダー企画である
  • アジアの大学への進学支援
についても、いよいよ今年から着手していく予定です。
アクション2: ハバタクユニークな価値をソーシャルツールを使って先鋭化する
前述のように妄想・ビジョンは大切だと考えているわけですが、これらは最終的には社外の方々に共感いただくのが大事です。おかげさまで「ハバタクって○○が得意/好きだよね?」といったご相談を受けることも増えてきましたが、初対面の方には決まって「結局ハバタクは最終的に何をやりたいんですか?」「いろいろ手がけているのは分かるけどどれがコアなの?」と聞かれてしまうのが現状です。これからもっと仲間を増やしていくためにはさらにシンプルで共感を抱いていただけるようなコミュニケーションが必要です。ブラッシュアップためには出口側、つまり社外の皆さんの目に触れるメディアのデザインから考えるのが有効なのではないかと考えています。
具体的には昨年その存在を知りながら着手できなかった画期的なプレゼンツール”Prezi“や、Ustreamなどの動画を使った手法は上記の要件に対するヒントになりえると考えています。この一年で世の中の人に「○○といえばハバタクだよね」と認識していただけるような状況を作りたいですね。また、こうしたブログなどのメディアも活用してパーソナルなexposureも(もともと苦手なので)積極的に進めていきたいです。

アクション3: ボーダーを越え、楽しんでチャレンジする
ファクト1でもお話したとおり、この一年ハバタクが無事に事業を展開してこられたのは、いわば「安全安心な舗装道路」を選んできたからではなく「リスクがあるかもしれない脇道横道けもの道」を選んできたからだと思います。この姿勢はこれからの一年もより一層強めていきたいところです。そのためには常に異質に触れ、なおかつその新しさを貪欲に楽しむことが第一でしょう。そこからまた新しい可能性が生まれてくるはずです。
例えば、昨日も参加させていただいた、ソーシャルチャレンジコミュニティ Blabo!さんのIdea Jockyは、WEBカメラの前に身を晒し、ラジオのパーソナリティのように今日のテーマをお話ししながらネット中継の視聴者からフラッシュアイデアを募集しまとめていく、という私にとっては完全に新しいチャレンジでしたが、最高に楽しい体験を得られました。こうしたことから新しい知見を得たりBlabo!さんとのコラボが生まれたりしていったらいいなと思いますし、そうやって自分の可能性を広げていくのは非常にワクワクする体験です。
また、これはまだ意志の段階ですが、海外のカンファレンスや教育現場に参加して、現在のサービスにさらなるユニークさを与えられる知見を持ち帰りたいなと考えています。我々がCertificationを保有するLEGO® Serious Play® Methodは、起業当時デンマークのトレーニングに参加して取得したものですが、開発責任者であるロバート・ラスムセン氏に直接指導していただけたばかりでなく、8か国から来たトレイニー仲間と濃い時間を過ごせたことが貴重な財産になっています。あれから一年以上経ちますが、再びクロスボーダーな場に身を浸してハバタクのパワーアップにつなげたい、という欲求が高まっています。
だいぶ長くなってしまいました。このエントリーでは、一年前に書いた2011年の事業計画を見返して気づいた興味深い点を振り返ることから始めて、2011年を終えた地点から思うこと、さらにそれを踏まえて今年注力したいポイントについて記述しました。
弊社のスローガンに「世界にハバタク冒険者を増やす。」とありますが、我々自身も冒険者であることを常に追い求めていきます。
2012年が昨年にも増して冒険的な年になるよう願っています。
さらに願わくば、皆さんとも冒険の仲間となれますよう。
長文をここまでお読みいただき、ありがとうございました。
(ハバタク長井)

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