[寄稿文]未来の冒険者へ


こんにちは、ハバタクの長井です。

ハバタクがいつもお世話になっている千葉県立東葛飾高等学校の先生より、「進路のしおり」に寄稿する機会をいただきました。

「進路のしおり」は、全学年対象で将来について考えるヒントを掲載した校内誌です。卒業生でもない私が生徒さんへメッセージを書くのは恐縮でもありますが、とても光栄な体験でした。リベラルアーツプログラムをお手伝いするなかで第二の母校のように思い始めているのも事実です(完全に身勝手な言い分ですが…笑)

許可をいただきましたので、このブログにも文章を転載いたします。これから将来を切り開いていく世代(もちろん、我々も含めて)に向けて、私として嘘偽りない気持ちを整理できたと思っています。よろしければご覧ください。

世界に羽ばたく冒険者!


長井 悠
20014月 東京大学文科三類 入学
20054月 東京大学大学院人文社会系研究科 進学
20074月 IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社 入社
201010月 ハバタク株式会社設立 取締役就任

 こんにちは、長井と申します。みなさんの学校のすぐ裏に住んでいて、いつもチャイムがわりの「エリーゼのために」を聴きながら仕事に出かけている人間です。東大の修士課程を卒業したあとにIBMというITを扱う大きな会社の一員となり、いまは「ハバタク」というちょっと変わった名前の教育ベンチャー企業を自分でつくり、経営しています。2年前から東葛リベラルアーツプログラムのお手伝いをさせていただいていて、今回ここに記事を書かせていただけることになりました。

 さて「進路のしおり」ということで、本来ならばIBMやハバタクでの仕事を格好よく紹介するべきなのかもしれないのですが、今回は別の話をしようと思います。なぜか?みなさんは、こういうデータをご存知でしょうか。

2010年時点で需要のある仕事ベスト10は、2004年時点では存在していなかった

2004年から2010年までの6年間のうちに、社会が必要とする(つまり、人気のある)仕事の上位がすっかり入れ替わってしまったということです。このしおりを読んでいるみなさんが就職を考えるのは、まさに5,6年後かもしれませんね。そのころには、きっと今では想像もつかないような仕事が登場しているはずです。
 また、こんなデータもあります。

18世紀の人が一生のうちに知りえた情報の量は、現代の朝刊1週間分である

私たちのまわりは情報だらけです。真偽は慎重に確かめなければいけないかもしれないけれど、「知りたい」と思ったことは大抵の場合インターネットで検索すれば出てきます。つまり、ただ「情報を知っている」だけでは何の価値もなくなってしまいました。だから、いま私の仕事について話すことは、みなさんにとってあまり役に立たないでしょう。

その代わり、私はこの場所を借りて、検索しても出てこない「進路の探し方のヒント」について話そうと思います。これは、私が10年ちょっとだけみなさんより長く進路を考えて実践してきた体験からお話しするものですが、ある程度どんな人にも当てはまるのではないか、と思うからです。結論からいうと、私がお勧めするのは「冒険のように生きる」ということです。「冒険」というとマンガや映画っぽくて、「進路」というマジメなテーマと関係ない、と思いましたか?でも私はこれからの時代を生きるみなさんにとても必要な生き方だと思っています。

 なぜならば、いま私たちのまわりはものすごく早いスピードで変化しているからです。たとえば、ITや交通の発達によって、人や情報の行き来が容易になりました。昔は何か月もかかっていたことが、いまは1日でできる、なんてこともあります。また、中国やインドをはじめとした若い国が力をつけてきて、どんどん商品をつくり輸出し始めています。そうすると世界でものづくりで有名なのは日本ではなく、中国やインドに代わってしまうかもしれません。

では、変化が激しくなると何が起こるのか?「予測のできないもの・こと」が私たちのまわりにたくさん現れてきます。いままで見たこともない商品が登場し、あなたの生活をガラッと変えるかもしれません。例えば、みなさんはおそらく携帯電話を当たり前のように使いこなしていると思いますが、私が高校生だった10年ちょっと前は、全然当たり前ではなかったのです。あるいは、聞いたこともない国の人があなたの隣に引っ越してくるかもしれません。リーマンショックのような危機がまた起こる可能性だってあります。5,6年後に私たちのまわりがどうなっているかなんて、本当に誰も予測できない時代になっているのです。

こんな話をすると、「進路」について考えるのにウンザリしてしまいますか?ちょっと待ってください。こうした状況は、みなさんはマンガや映画でおなじみのはずです。『ワンピース』はまさにその典型ですね。次になにが起こるか分からないワクワクドキドキ感に、心躍らせているはずです。「あれはマンガだから面白いんだよ。自分の進路の話は別」と思った人、本当にそうでしょうか?すでに述べたように、私たちは「先が予測できない時代」に突入してしまっているのです。だとしたら、「予測できないこと」にビクビク・イライラするより、それらをうまく乗りこなして「冒険する」ほうが楽しいと思いませんか?


例として、私のこれまでの進路の話をしましょう。私の進路は、少なくとも大学や会社の名前は有名だし、何だか最初から立派な計画があったかのように見えるかもしれませんが、むしろ逆です。高校生のときの私に、「10年後には大きな会社を辞めて自分の会社を作ることになるよ」と教えてあげたら、きっと腰を抜かすでしょう。明らかに、当時の自分の想像を超えた人生を送っていると思います。「なんでそんな冒険しちゃうの?」と詰問されるかもしれません。

でも、いまの私がこれまでの進路を振り返ってみたとき、「ベストかどうかは分からないけど、間違いなく楽しい人生を送れている」ことは断言できるのです。なぜそんな進路になったのか、と考えてみると、私は人生の節目で次の2つのことを必ずやっていることが分かりました。この2つを「進路の探し方のヒント」としてみなさんにご提供したいと思います。

1.    やりたいと思ったことは、(仮でもいいから)口に出す
2.    「自分の知らないもの・ことに出会えるかも?」と思ったら、飛び込んでみる

まず1のほうから例を挙げると、実は高校生のときに最初に「いいな」と思った進路は東京芸術大学(芸大)でした。部活で楽器を弾いていて、音楽が仕事になったらいいなと思ったのです。特にとびぬけた才能があったわけでもないのに恥ずかしげもなく「芸大に行きたい」と進路指導の先生や両親に公言し、大学の先生のところに相談に行ったのですが、「悪いこと言わないから止めておきなさい」と言われ、泣く泣く諦めることになりました。あっという間に夢を打ち砕かれた格好です。ただ、「諦めた」と報告するのは格好悪いので、見栄もあって「やっぱり東大にします。同じ国立だし…」と言ってしまいました。すると不思議なもので、先生をはじめとしていろいろな方が協力してくださいました。受験勉強はかなり大変でしたが、結果としては無事合格することができました。

ここでのポイントは「勉強を頑張った」ことではなく「最初に芸大を受けると言った」ことだと私は思っています。大それたことでも口に出すことであとに引けなくなりますし、まわりの人たちもあなたを応援してくれるはずです。

2の例としては、東大に入学した後に体育会の部活に入ったことです。私はずっと楽器をやってきた典型的な文化系男子だったのですが、「せっかく大学4年間を過ごすのなら全然やったことのないことをやってみよう」と思い立ち、武道を選びました。特に運動が得意なわけでもなく、厳しい雰囲気にも慣れず最初は大変苦労しましたが、いままであまり付き合ったことのないタイプの人たちとも仲良くなり、最終的には大会でも活躍することができました。

いま振り返って何より重要なのは、そこで出会った仲間がきっかけで大学院への進学IBMへの就職などが決心できたことです。「自分とは合わない」と思うことほど、自分への刺激が大きいため、次の進路を考えるときにより貴重なヒントになるのだと思います。

ここまで自分の話をさせていただきました。12も、傍から見ると「行き当たりばったり」のように見えるかもしれませんし、ある意味ではそうなのかもしれません。でも、すでに述べたように、「予測できない時代」においては次々に起こる未知のもの・ことに対して柔軟に対応していけるのはこうした生き方だと、私は信じています。


実は、私の経営しているハバタクという会社は、こうした「冒険者」となって世界に羽ばたいていく若者を増やしていきたいという想いで始まりました。自分の夢・志を語りながら、仲間を巻き込み、未知のもの・ことを楽しみながら人生の進路を進んでいく人たち。まるで『ワンピース』の主人公たちのようでもありますが、それはマンガのなかだけでなく、みなさんが選べる人生なのです。その一歩として、上記の12を覚えていただけたら嬉しいです。みなさんの人生が豊かで刺激に満ちた「冒険」となるよう、応援しています。



◆参考:
冒頭に紹介しているファクトは以下の動画からの引用です。先日参加してきたLEGO Idea Conference 2012でも紹介されていました。
Did you know 3.0

もともとは、高校生が将来を考える材料として準備されたもので、年ごとに内容がバージョンアップされたり、音楽がリミックスされたりしているようです。おおもとのブログはこちら。データの出典も記録されています。
THE FISCHBOWL

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