こんにちは、丑田です。
秋の夜長に1冊、ということで、「はらぺこあおむし」をご紹介。
アメリカの絵本作家エリック・カールが1969年に出版した絵本で、33カ国の言語で翻訳・出版、出版部数は全世界での合計で2,500万部以上(2007年時点)という化け物絵本。
ストーリーは、「日曜日の朝に生まれたあおむしが、月曜日にはりんご、火曜日には梨と、いろいろな食べ物を食べながら成長していく。土曜日には食べ過ぎでお腹を壊してしまうが、やがてさなぎになり、最後には美しい蝶へと変身する。(wikipediaより)」というもの。
大人気の理由は、
・ストーリーがシンプルで、子育てとも重なる(生まれて、食べて、成長して、巣立つ)
・鮮やかで大胆な色使いの絵
・仕掛け絵本が面白い
といった点。これは掛け値なしにスゴイ。
でも、実際に家で子どもに読み聞かせてみて、他の絵本とくらべても特段にものスゴい!と思うのは、
「色んな角度からのコミュニケーションができる」ことと、
「何度も繰り返し読んでしまう仕掛けがある」こと。
・数や曜日、食べ物、色など、よく使う基礎的な概念・言葉が盛り込まれていて、これらを自然と学べる。
・これらは日常でも出てくるものなので、普段の会話でも、「はらぺこあおむしに出てきたものだッ!」という会話が繰り返され、さらにコミュニケーションと学びが深まる。
・絵本の最初から最後までを音楽にのせて歌うことができ、親にとっても子どもにとっても、何度も楽しく読めて、歌えて、覚えやすい。音感も良くなってくる。(絵本とCDのセットも発売されている。Youtubeでも色々な動画があるので、これを用いるのもGood。お陰で、2歳時点で完全に全文を覚えてしまった。)
さらに、色々な場所で触れられるように、多くの形状を用意している。
-ミニエディション 10×13センチ(お出かけ向き)
-ボードブック 13×18センチ(めくりやすい丈夫な造本)
-普通 22×30センチ(一般的に買われていると思われるもの。自宅向き)
-ビックブック 42×58センチ(みんなで楽しめる大型。保育園など向き)
ビジネス的には当然ながら、関連商品もしっかり出されており、ランチプレートやマグカップ、お茶碗、スプーン・フォーク、トランプ、ペンスタンド、ぬいぐるみ、DVD、ゲーム(wii)などなど、世の中はもうあおむしだらけである。
プロモーションもかなり強力に行っており、子どもが生まれてから目に触れる媒体に、ピンポイントで出してくる。(雑誌・新聞等への広告、映画のチケットの裏面などへの広告、出産祝いカタログ、イベント開催など)
結果として、自宅でも、お出かけ先でも、保育園・児童館でも、どこにいても我々は「はらぺこあおむし」に包囲されることになる。
しかも世界中で売られているので、国境を越えてももはや逃げ場はない。
こうなると、親子のコミュニケーションだけでなく、先生とも、親友達とも、外国人とも、はらぺこあおむしは会話の糸口になる。
これから先も世界中で売れれば売れるほど、この「会話の共通プロトコル」の側面はどんどん強化されていく。
以上が、「はらぺこあおむし」世界包囲網である。ここまでくると気持ちよくなってくる。
いやはや、世界中で長く読まれ続けている名作って、純粋にすごい。
最後に、「絵本を読むこと」について。
毎日の絵本の読み聞かせは、子育ての上ではものすごく重要とされていて、実際にそうだと思う。子どもにとっての膨大な学びになり、親子間のコミュニケーションにもなる。
これらに加えて、「大人にクリエイティブさを取り戻す」ことにも一役買いそうな気がしている。
・声色やスピード、大きさ、メロディー、仕草、ボディータッチなど、あらゆる手段を駆使して子どもを喜ばせる
普段の多くの仕事では、メールや会話、プレゼンなどで使う表現って固定されがちで、全身や五感まで活用することはそこまでないと思う。でも実は人間の表現はとても幅広いことを改めて思い出させられる。
さらに、子どもは組織のルールなど形式張ったものがなくて、純粋に楽しいと喜ぶというフィードバックが直に返ってきたり、その時の気分によって全く違ったフィードバックになったりするので、全力で試行錯誤させられる。
はじめから音楽が用意されている「はらぺこあおむし」を基礎編とすると、そうでない普通の絵本でもスパークできるようになるのが応用技。これはもはやクリエイティビティの領域である。
・絵本の登場人物になりきって、ストーリーを読み進める
昨今のビジネスの場面では、クリエイティブなアイデアを出したり試したりする時にスキット(寸劇)を行ったり、ユーザーの行動を観察・体験したりする(対象に深く触れる)ことの有用性が認められてきている。左脳だけでなく、右脳的にもものごとを捉えていくということである。
ここでは、「なりきる」というのはとても重要となる。絵本を日々読みまくり、右脳的なOSをインストールし直すのである。
また、社会から与えられた道ではなく、自分の好きな人生・ストーリーを生きるというのも、ある意味自分に「なりきる」ということかもしれない。
世界で最もクリエイティブな「子育て」という仕事を楽しみつつ、これを社会での仕事の中でも活かしながら、人生を楽しんでいきたいと思うのでした。
丑田俊輔