シンチャオ、小原です。
日本は寒い日が続いているようですね。
朝晩は涼しくなってきたホーチミンですが、相変わらず暑い日々が続いています。
1月中旬に日本に一時帰国しましたが、南国仕様の私の身体は東京の寒さに耐えられず、風邪をひいてしまいました。(幸い、ホーチミンに帰った途端に治りましたけれど。)
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2013年、ハバタクが最も注力する事業の一つが「Cross Border Incubation Platform(以下、XIP)」です。
これは新興国の様々な社会問題をビジネスで解決しようと奮闘するイノベーター達と日本の若者がタッグを組み、国内の経験豊富なミドル・シニア層からバックアップを受けながら、社会変革に挑む取り組みです。
昨年は本プロジェクトのアイデア想起から具体的な仕組みづくりまで、共創の土台づくりを行ってきました。(関連記事: 『Cross Border Incubation Platform、間もなく始動!』、『ハバタクベトナムの生態 ~社会変革の土台づくり~』)
そのプロジェクトが、2月1日のキックオフを皮切りにいよいよ国境・世代を越えて動き出そうとしています。
2025年、イノベーションの未来図
そんな折、「ワーク・シフト」と言う本を読みました。
2025年に人々はどんな働き方をしているのか?という問いに対し、具体的なファクトや考察に基づきいくつかのシナリオを提示してくれます。
例えば、テクノロジーの進化・グローバル化の進展によって、世界中の人々がインターネットに繋がり、世界中にビジネスパートナーが出来る。結果、24時間週7日休まないグローバルな世界が出現し、人々は今まで以上に時間に追われる生活を強いられる、という未来シナリオ。
このような技術革新による物理的制約からの解放、情報取得コストの低下など、2025年までに働く環境の転換、価値観の転換が起こる。そして、そんな自分を自分らしく生き生きと暮らしていくためには、従来とは異なる新しい働き方・生き方へのシフトが必要だ、というのがこの本のメッセージです。
この「ワーク・シフト」の中でひとりひとりが孤独に競争する働き方から、協力して起こすイノベーションへと働き方をシフトするためのポイントとして「未来に必要となる三種類の人的ネットワーク」が紹介されていました。
これがまさにXIPのエッセンスそのものでしたので、ここで紹介させていただきたいと思います。
これがまさにXIPのエッセンスそのものでしたので、ここで紹介させていただきたいと思います。
グローバル化が進み、世界中の人々が結びつく時代には、大勢の人たちの能力と ノウハウ、人脈を統合することにより、真のイノベーションと創造が実現可能だというのです。
これからのイノベーションに必要な3つの人的ネットワーク
まず、そもそも以下に示す3つの人的ネットワークがなぜ必要になってくるかというと、大きく以下の2点に起因します。
- 未来の世界では、広く浅い知識を持っているだけでは価値を生み出せなくなり、知識の深さが求められるようになる。
なぜなら、大抵のことをはインターネットを検索すれば、(かなり専門的な知識まで)情報収集可能だからだ。
- 個人個人が孤立した状態で、求められる高度な専門知識(深い知識)は身に付けられない。
したがって、未来に必要とされる高度な専門知識を効率良く習得するためにアドバイスと支援を与えてくれる少人数のブレーン集団が不可欠なのです。
これが第1の人的ネットワーク、ポッセ(頼りになる同志)です。
なぜなら、大抵のことをはインターネットを検索すれば、(かなり専門的な知識まで)情報収集可能だからだ。
ポッセ(Posse)
ビジネスパートナーのボードミーティングに参加にする私
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ポッセとは、比較的少人数の信頼できるメンバーで構成されるコミュニティーで、何か困ったことがあれば、いつでも力になってくれると期待できる仲間たちです。
皆さんは、日々の仕事や生活で困難にぶつかった時にどんなアクションをとりますか?
- 誰にも邪魔されないところで、集中して課題に取り組む
- 課題に詳しそうな人に連絡して助言を求める
ここで紹介しているポッセとは2の選択肢に他なりません。
自ら考えるというプロセスは当然必要ですが、信頼できるブレーンで構成されるポッセの存在により、問題解決のアプローチを検討する初動が早くなり、より深い考察のために自分のリソースを割くことが出来るのです。
ポッセの構築で重要な点はいくつかありますが、特に下記の点について日頃から意識しておくことが重要でしょう。
他の人と協力する技能に磨きをかける
多様な人々の特性を最大化し、また助言を求める相手がインターネット越しであってもうまくコミュニケーションを取る技能がなければ、充実したポッセ(頼れる仲間)の構築・活用が出来ません。
技術革新により世界中の誰とでも物理的な距離を越えて繋がることは容易になりました。
しかし、多様なバックグラウンドを持つ人々とバーチャル環境で共創をする力というのは、未来では必要不可欠であり、日頃からトレーニングを積んでおく必要があるのです。
ビッグアイデア・クラウド(Big Idea Cloud)
何か課題や問題に取り組む際、いつでも助言をもらえるポッセがあれば充分じゃないか、というとそうではありません。
というのも、ポッセを構成するメンバーというのは自分が信頼できる人々であり、ある程度興味や専門の領域が近いことが多いのです。
頼りになる仲間であると同時に、どうしても多様性には乏しく、均質的な考え方になりがちになってしまいます。
問題解決のために、斬新でスケールの大きいアイデアが必要な時には残念ながらポッセは役に立ちません。
そんな時、アイデアの源となるのがビッグアイデア・クラウドです。
例えばこんな経験はないでしょうか。
facebookやtwitterに「xxxについて知っているひといませんか?」と投げたら、友人の友人に専門家がいて助言を受けられた。
全く門外漢のことに取り組む時、とりあえず緩く繋がっているコミュニティにボールを投げたら思わぬところから、好返球があったという経験です。
つまり、自分とは異なるタイプの人、異なる視点からアプローチする人々とのネットワークがより革新的なイノベーションの突破口となるのです。
スタンフォードの社会学者グラノヴェッターも「弱い紐帯の強み」という自説で、『所属しているコミュニティの外に多様な繋がりを持つ人の方が、組織内での業績が高い』ことを実証しています。
上質なビッグアイデア・クラウドの構築のポイントは以下の2点です。
- 自分の人的ネットワークの外縁部にいる人たちで構成される。
- メンバーの数が多い方が良い。
この2点はfacebookやtwitterといった簡単に多くの多様な人たちと繋がることの出来るツールがある今、そしてこれからの時代では比較的容易に形成可能です。
自室に引きこもりながらにして、世界中の顔の見たことのない人たちと”友達”になれるんですから。
余談ですが、いつでも誰とでも繋がれるはずのインターネットですが、実はむしろコミュニティの均質化を生んでいるのでは・・という問題を提唱したのが「閉じこもるインターネット」です。
この話はまた別途。
自己再生のコミュニティ
さて、これまで2つのネットワークを紹介してきました。
ポッセ、ビッグアイデア・クラウド共に自分自身の思考や問題へのアプローチを拡げるうえで非常に有効で、これを活用できるかどうかが個人のアウトプットに大きな差をもたらすことでしょう。
しかし、この2つはコミュニケーションがバーチャル空間に閉じられやすいという特徴があります。
いつでも誰とでも繋がれるということは、もはや部屋から一歩も出る必要がなくなると言うことです。
その結果、今まで以上の孤独にさいなまれる人が増えてくるというリスクがあります。
facebookには”友達”が世界中に1,000人以上いるにも関わらず、です。
そんな未来の孤独から我々を救ってくれるのがこの自己再生のコミュニティです。
これは要するに、現実の世界で顔を合わせ冗談を言い合える、プライベートな悩みを相談できる支えと安心を提供してくれる人たちです。
なんだそんな当たり前のことをと思うかもしれませんが、前述のようにともすれば全ての人間関係がオンライン上で済んでしまうような世の中です。それゆえに今まで以上にオフラインのコミュニティの維持は意識的に行っていかなければいけなくなってくるのです。
家族や親しい友人であればこそ、メールやチャットで済まさずに顔を見て話せる時間を持っていきたいですね。
国境・世代を越える社会変革のカタチ
今まで紹介してきた3つの人的ネットワーク、ポッセ、ビッグ・アイデアクラウド、自己再生のコミュニティをXIPの仕組みに当てはめてみたいと思います。
XIPには3つのプレイヤーが登場します。
ベトナムで社会問題解決に取り組むイノベーター
イノベーターのもとに飛び込み、イノベーターと共に事業展開・問題解決に挑む若者(New Leader)
そして、日本に居ながら専門的知識・技能を提供し、問題解決の後押しをする各分野のエキスパートたち(Co-Creation Partners)
それぞれの関係性、プロジェクトの進め方はまさに3つの人的ネットワークそのものです。
例えば、イノベーター、New Leaderは日々の事業課題をCo-Creation Partnersに相談し問題解決に取り組みます。ベトナムに居るメンバーでは解決できない専門性の高い課題をCo-Creation Partnersに相談することで乗り越えていくのです。→ポッセ
またポッセのメンバーでは糸口が見えないとき、3者はそれぞれのオンラインコミュニティにボールを投げ込みます。そうするとそれぞれが持つ広範なネットワークのどこかから、きっと突破口を開く妙案や新たなネットワークが出てくることでしょう。→ビッグアイデア・クラウド
そして当然、3者それぞれは家族や友人といった、直接の対話を通じて安心を得られる自己再生のコミュニティを持っているのです。
XIPは3つのプレイヤーの誰一人として欠けても実現しないチャレンジングな取り組みです。
そしてその3つのプレイヤーの力を最大限引き出す仕組みとして、3つの人的ネットワークを活用してくことが重要なのだと思います。
我々の取り組みであるXIPを引き合いに出しましたが、生き方・働き方のシフトは誰にも訪れることです。
新しい時代をいきいきと生きるためにも、今から3つの人的ネットワークを意識的に構築していってはいかがでしょうか。
小原祥嵩