愛があるなら叱るべき、なのか?


私は叱るのが苦手です。

日頃、ハバタクのアソシエイト(学生メンバー)たちと一緒に仕事をすることが多々あります。すると彼らに対していろいろ言いたいタイミングというものが発生しますが、基本的に私は甘いわけです。「まあいいか…」と。

心の内実を探ってみると、結局小心者の自分がいます。「雰囲気を壊したくない」「嫌われたくない」「逆ギレされたら怖いな」などなど…。この傾向は小さい頃から変わっていなくて、大学の部活時代や前職のIBM時代にも自覚していたことでした。

本来ならば、表面的なその場の雰囲気とは関係なく、彼らの将来を思って心を鬼にして叱るべきでしょう。それこそが本当の愛の表れというものです。そう思っていながらあまりできない自分がいました。

そんな私も少しは叱ることができるようになってきたのは、やはり娘の影響でしょう。彼女は自由です。なんの常識にも前提条件にも縛られないので、たとえば早朝に木琴用のハンマーで父親の顔を急襲するくらいは文字通り朝飯前なわけです。さすがにこれを放置していたら、保育園でどんな暴君になってしまうか分かりません。あるいは、気分次第では食器を食卓から投げたりします。そういうときには「将来のためを思って」ちゃんと叱るように心がけています(つもりです)。

写真はイメージです。ちなみに娘のはバチではなく、本当にハンマー型なのです。


ただ…叱ることについて、1つ気になっていることがあります。

叱るというのは、基本的に自分の価値尺度を強要することです。叱った相手に「この価値尺度がお前の役に立つから取り入れろ」と言っているわけです。

「果たして、どこまで価値尺度に自信を持って叱れるだろうか?」
「もしかして、ただの頭の硬い保守的なことを言っているだけなのでは…?」
「叱っているこの瞬間に、柔らかい発想の可能性の芽を摘んでしまっているのでは…?」
こういう疑問や恐れを常にもっています。

たとえば、以下に並べたなかで、みなさんだったらどれが叱る対象で、どれが叱る必要のない対象でしょうか。

A. 早朝に寝ている他人を殴る
B. 食事中に食器を投げる
C. 他人にできもしない約束をして、破る
D. 仕事の現場で眠そうにする
E. ビジネスメールに顔文字を混ぜてくる
F. Facebookのメッセンジャーで仕事相手に連絡する
G. 会議中に年上の人に反論する

私個人としては、A~Eの行為は叱る対象です。F~Gは、むしろ自分もやっています。でも、この線引きは完全に私個人の基準であり、たとえば「Eは許容する」という人もいるでしょうし、「Gは許さない」という人もいると思います(ある学校の先生から、そういう職員会議がけっこう存在すると聞いたことがあります)。

学生さんや娘の世代がやっていることを、自分の常識だけで「良い/悪い」と決めつけることは危険であると自分に言い聞かせています。もしかしたらその行為や、行為を生み出している思考が未来をより良い方向に向かわせる重要なヒントになるかもしれないのですから。おそらく、多くのパイオニアや改革者と呼ばれる人たちは、幾度となく周りから叱られるような思考・行動をしたのちに、大きな成果を生み出しているはずです。ただその反面、人間が社会生活を営む動物であるかぎり、そのルールを逸脱するようなことを許容しまっては本末転倒です。

当然ながらこの葛藤に答えはありません。結局判断するのは自分ですから、判断材料を増やしたり他者に相談したりという補強策はあるにせよ、最後は自分の基準をつくり、それに頼らざるを得ません。結局のところ、この「基準」というものを常にアップデートできるだけの柔軟性をもって世界に接することができるか、という点が肝になってきそうです。そうでないと「お前のことを思って叱ってるんだよ」という”愛”は、ただの押し付けになってしまうのでしょう。

「愛」というキーワードでライトな記事を書くはずだったのに、結局わりとおカタい記事になってしまいました。すでに柔軟性がなくなっているようで早くも心配です。みなさん、上記のようなお悩みについてピンと来ましたらぜひご意見ください。ディスカッションしてみたいです。

ちなみに、娘のハンマー攻撃は最近すっかり鳴りを潜めました。娘は相手を起こすのが目的なので、より効率的な方法を発見したようです。すなわち、1) 顔面にボディプレスをして息苦しくさせる 2) 「お腹すいた〜」と叫ぶ の2つ。前者はともかく、後者の場合大義は娘にあり。我が娘ながら、なかなかイノベーティブなアイデアなのではないでしょうか。

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