今までとこれからのXIP


2013年4月よりベトナム国内での活動を本格始動した国境と世代を越えた社会変革Cross-Border Incubation Platform(以下、XIP)。
本年度の取り組みは2014年3月までの1年間を予定しています。現在はちょうどその折り返し地点。この半年の成果をご報告します。

日本の知見で変わる現場

大量のバイクによる排気ガスや日常的に使用する練炭から出る有毒な煙など、自らが直面している社会課題解決へになみなみならぬ意欲を持つ社会起業家。資金や人など活用できる経営資源は限られているものの、創意工夫によって事業拡大に努めています。

とはいえ、ビジネス知見・経験の不足により、解決できないあるいは解決に必要以上に時間を要してしまっている事業課題が多々あります。

その解決への支援こそが、日本チームに期待されていることでした。

例えば、環境負荷の低い練炭の製造を行っている現地企業では、品質のバラつきを抑え生産性を向上させることが課題でした。

そこで日本のメーカーの生産管理プロフェッショナルの登場です。
活動の拠点である日本から遠隔での現状調査・改善指示にとどまらず、休みを返上して自らベトナムに渡航。練炭の生産現場で直接課題解決に取り組んで頂きました。
的確で具体的なコメントを受け、現場の意気は非常に上がりました。

結果、生産ラインの配置見直しや、製品の品質を決める重要工程の効率化施策が提案され、現在その実行段階に入っています。

現地企業が長年取り組んできた課題解決にビジネスプロフェッショナルが積み上げてきた知見が大きく貢献した瞬間でした。

ここで挙げたのは一例ですが、XIPには事業開発、会計・財務、ITなど各分野の一線級のプロが日本から遠隔で社会変革のために知見を提供してくださっています。

ベトナム起業家からの学び

日本からの知見が事業課題解決に寄与したと書きましたが、日本が教え、ベトナムが学んだという一方通行の協業だったかというと決してそうではありません。
日々目の前の社会課題解決に奔走する彼らから、日本チームも多くのことを学んでいます。

例えば、事業を進めるスピード感です。
ベトナムを始めアジア各国の社会起業家の90%以上は家族経営の小さい企業です。
両親が始めた事業を子どもや親戚が手伝っているのです。

そんな規模の企業ですから、まどろっこしい社内プロセスなんてありません。
やるべきと思ったら即決断即実行。また必要だと思えば、すぐに経営の舵を切ります。まさに朝令暮改です。
日本の規模の大きい企業経営スピードに慣れ親しんだ日本チームは戸惑うこともしばしばありました。
しかし社会起業家との協業によって、アジアで事業を展開していくそのスピード感と求められる決断力・実行力を実感値として得ることが出来たのです。

New Leaderの苦悩と成長

社会変革の現場である起業家の事業と日本の知見を有するビジネスプロフェッショナル(Co-Creation Partner 以下、CP)。
この両者を繋ぎ、プロジェクトの結節点となっているのが、新卒でベトナムに飛び込んだNew Leaderの二人です。
彼らなくして、遠隔での日越コラボレーションは絵に描いた餅に過ぎなかったでしょう。

New Leaderの二人はベトナムでの日常生活にはすぐに溶け込んだものの、プロジェクト遂行にあたっては日々悪戦苦闘しています。

ビジネス経験のない状態でベトナムに渡った二人。
また協業するのはベトナムの起業家と日本のビジネスプロフェッショナル。
事業の内容理解から、専門的な内容まで短期間で理解して、双方に伝えなければいけません。

起業家とのコミュニケーションでは互いに英語が母語でないため、思ったように事業のヒアリング・理解が進みませんでした。さらに日本のCPからは専門的な質問が飛んできます。これを理解し、起業家に如何に理解してもらうかに相当苦労してきたようです。

口頭でコミュニケーションだけでなく、ホワイトボードを活用した文字・イラストでの情報共有、メールでのフォローなど相互理解を深めるための工夫を重ねてきました。
またCPとの対話とインターネットや書籍を介した日々の学びを続け、ビジネスに係る知識も習得に励んでいます。

大企業であれば新人研修を受け、現場に出てからは先輩社員がサポートし、徐々に独り立ちするところを一足飛びにやらなければいけません。

一見無謀にも思えるチャレンジングな目標に日々ストレッチしていく中で彼らは成長を続けています。
残り半年の活動を終える頃には、新卒で企業に入社した同世代とは一線を画するユニークな存在になってくれていると期待しています。

これからのXIP

記念すべき第一期となる今年度のXIPはあと半年で終了です。
今年度の様子は今後も折にふれて紹介してまいりたいと思います。

本エントリは来年度以降のXIPの展望について触れて終えたいと思います。

今年度のXIPは社会変革や自身の成長にコミットした各世代・各領域の人たちが個人として参加してくださいました。
来年度は個人向けだけでなく、企業向けにもこの取組を展開していこうと考えています

企業向け:企業のアジア進出を加速する起業家とのコラボレーション

アジアへの事業展開を図る日系企業は多く、今後も増加を続けるでしょう。
しかし、現地市場の事業環境の理解やネットワーク不足により事業展開が思うようにいかず、計画通りに事業展開が進まないという事例が少なくありません。
またこれからの企業の在り方として、社会環境との持続的な関係構築を掲げている企業は多いですが、その理念を事業の中で実現出来ている企業は数社にも満たないのではないでしょうか。

そこで、企業向けのXIPでは、日本の企業がアジアの社会起業家の事業拡大にコミットし、新興国のソーシャル・ビジネスの拡大を促進することによる、双方の事業課題解決に取り組みます。
両者の協業は社会起業家の事業ひいては社会変革最大化に寄与出来ることはもちろんのこと、日系企業にとっては市場に対する理解やネットワーク、実運用上のノウハウを獲得することができ、新興国における事業の立ち上げスピードや成功確率を高めることに繋がります。

従来の市場競争力の獲得と社会的意義の両立を目指す取り組みです。

個人向け:社会変革にコミットする仲間と駆け抜ける

今年度同様、日本のビジネスプロフェッショナルと共にアジアにおける社会起業家支援を通じた社会変革に取り組みます。
活動範囲はベトナムに限らずアジア各国へと展開していく予定です。
その際には、新興国各国の中間支援団体と協力し、有望な企業・起業家の選抜、ビジネス拡大に必要な要件の洗い出し、必要なスキル・経験をもったプロフェッショナルのアサイン、事業支援というプロセスを通じ、社会変革を最大化出来るチームとともに、ワクワクする世界の実現に向けて邁進してまいります。

国境・世代を越えた社会変革はまだ始まったばかり。
プロジェクトとしても日々改善しながら進んでいる状態ではありますが、半年間の取り組みを通してこの活動が確実にベトナムの社会変革に寄与していることを実感しています。
また、活動を通じてNLやCPもそれぞれが国内や自身の組織で限られた人たちとの閉じた環境では得られなかったであろう体験・学びを提供できる仕組みであることも確信できました。

今後もXIPを通じて、国境や世代を越えた共創が生まれ、よりよい社会が実現出来るよう、ハバタク総力をあげて、プロジェクトを進めてまいります。

今後共どうぞよろしくお願いします!

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