世界に触れて学ぼう:理系女子たちがボストンに飛んだ理由


こんにちは、ハバタクの長井です。日本はすっかり春めいてきましたね!

さて春といえば新しい学年や年度が始まる季節。自分の進路やキャリアについて考えを新たにするきっかけでもありますね。

そこで今回は、先日終了したばかりの”Rikejo Global Tour 2013 in Boston“(以下「ボストンツアー」)の開催レポートと合わせて「学ぶ場所を変えて将来を考える」意味についてお話ししようと思います。

今回のツアーのメインビジュアル。N.Y.の写真じゃないか、というツッコミも数多くいただいておりますが、伝わってくるワクワク感はホンモノです!


ボストンツアーを企画した経緯:国境を越える学びをより若い時期に

ハバタクではこれまで、国内の教育機関向けに新しい学びのエッセンスを提供する”Education 3.0 Project“と、国外での若者の活躍の舞台を提供する”和僑プロジェクト“の2つを大きな柱として活動してきました。

それ自体は順調に進行しているわけですが、どうしても前者と後者では年齢層がわかれてしまいがちで、「今後の新しいロールモデル=和僑を育て、若者に新しい将来選択のオプションを提供する」という全体のストーリーにミッシング・リンクが存在するのではないか、という議論になってきたわけです。

つまり、「学生時点で海外に飛び出しちゃう選択肢だってあるんだよ」というメッセージをもっと前面に押し出した企画を創りたい。その可能性を圧倒的な体験として感じてもらう舞台を用意したいと思うようになりました。


理系女子=リケジョを世界とつなげる


とはいえ、日本の学生さんといっても分野も年代も様々です。前述のような経験を提供する第一弾として象徴的な人たちはどこにいるのだろうか?と模索していたところ、「理系女子」に行き当たりました。

一応前もって表明しておくと、私は「理系女子」というセグメントのしかたが好きなわけではありません。そもそも文系・理系という分けかた自体、最近の学際的なトレンドを見ているとますます意味が薄くなってきていると感じますし、欧米では人文科学・社会科学・自然科学の三分法が一般的で、多かれ少なかれ「科学」的態度が必要とされるという認識でもあります。

ただ日本の教育の現状をみていると、理系に分類される分野に興味をもつ女子学生は少数派で、それがゆえにロールモデルが少なく、キャリア形成に困難を感じているケースが少なくなく、目の前の問題として見逃せないと考えています。それに加えて保護者世代の「常識」からすると、例えば「理系なんて選んで、ちゃんと結婚できるの?」というような不安をもつが故に娘の探究心を鈍らせるようなシーンもあると聞き、世代間ギャップの問題としても典型的なものを感じていました。

それに対して、世界には多くのロールモデルが存在し、また国籍を問わず優秀な理系女子をもとめる舞台が大学にも企業にも存在します。本来は実に豊かな未来が拓けているはずの日本の理系女子たちは、純粋に「知らない・見たことない・体験したことない」というだけでその可能性を閉じてしまっているのです。最大のボトルネックは、もしかしてここなのではないか、と思いました。日本の理系女子たちに世界最先端の研究とロールモデルに触れてもらう非日常体験を提供することで、彼女たちの将来の選択肢を一気に広げること。それは副次的に学習へのモチベーション向上や、一生モノの仲間を得ることにもつながるはずです。

日本最大の理系女子コミュニティとのコラボレーション

日本の理系女子が集まっているコミュニティといえば、講談社さんの”Rikejo“です。現時点で16,000人以上の中学生〜大学生の理系女子を擁しており、ロールモデルの提供をミッションに会員誌やWEB、イベント等のサービス展開をしています。以前より一緒に仕事をさせていただいていますが、今回いよいよグローバル企画でコラボできるかもしれないということで、実はかなり前から社内の議題として上げさせていただき、機会を窺っていました。

RikejoのWEBトップページ。日本では随一の会員数を擁する理系女子コミュニティです。

大学の街ボストンにdeep diveする

ボストンの街並み。アメリカ発祥の地であり、ヨーロッパを彷彿とさせる古き良き建物も多い、素敵な都市です。


そのようなことを考えて試行錯誤するうち、STEM教育(科学技術教育)実践の第一人者である石原正雄氏を通じてタフツ大学の工学教育プログラムの紹介がありました。研究大学として名高いタフツ大学のCEEO(Center for Engineering Education and Outreach)のは世界でもユニークな工学×教育の研究機関であり、子どもから大人まで幅広く「作って学ぶ」意義や楽しさを発信しています。アメリカはもともと理系女子教育の先進国でもあり、日本の理系女子を連れて行くにはもってこいの環境でした。

そこで、石原氏にコーディネーターをお願いしてさらに大学および科学・文化に触れる体験を重層的に組み合わせ、出来上がったのが今回のプログラムなのです。



訪問した大学

  • タフツ大学(Tufts University)
  • マサチューセッツ工科大学(MIT)
  • ハーバード大学(Harvard University)

訪問した施設

  • ボストン科学技術博物館
  • ボストン美術館

交流・会談した人々

  • Chris Rogers教授はじめ、タフツ大学CEEOの研究者・大学生
  • ワークに参加してくれたボストンの小学生たち
  • MITのメディアラボで働く女性研究員
  • バルセロナから留学してメディアラボに来ているスペインの大学生チーム
  • シカゴのIIT Institute of Design (ID)に留学中の日本人社会人
  • ハーバード大学の大学院(教育学)に留学中の日本人社会人



ボストン、マサチューセッツ州会議事堂をバックにジャンプするリケジョたち。本当に優秀かつアグレッシブな「旅の仲間」です。



ツアーの内容や、そこで学んだことは膨大すぎて今回のエントリーですべて書いていくのは難しいので、これから何回かに分けて投稿していこうと思います。

まずは「結局どうだったの?うまくいったの?」という疑問に応えるため、まずはアンケートを参照して参加者の声からご紹介することにしましょう。


-平均満足度

166.67点(100点満点中)
※点数に自由記述欄を付けておいたら、こんな点数をいただくことができました。


-タフツ大学CEEOプログラムに関して

そもそも私はこのツアーに参加するまで、工学の分野にあまり興味がありませんでした。それをかえてくれたのがこのプログラムです。印象に残っている言葉は「工学はartでもある」ということ。だからそれぞれのデザインがとってもユニークで楽しいし、美しい。堅苦しそうだし、難しそうっていう考えから、大変なことはたくさんあるんだろうけどものつくりって楽しいという考えに変わりました。それから失敗を恐れずに何度も何度も考えて、やり直すことの大切さを体感したし、成長することも実感できました。(大学1年生)

受動的ではなく自分で考えて作って動かすのがすごく楽しかったし、最後にこどもたちに遊んで楽しんでもらえたのがすごく嬉しかったです。(高専1年生)

工学やプログラミングを伝えるということも大切な活動であることを知り、教育に興味を持てたから。今後の学びの目標や就職を考えるときに、今回得た新しい視点を生かしたい。(高校3年生)

-MITメディアラボでの女性研究者との会談

お話が印象的だった。ずっとトップだったのにMITで挫折したと聞き、MITのレベルの高さを感じたし、学びのサイクルなど前日までタフツで習ったこととつながっていて面白かった。(高校1年生)

メディアラボ自体がすごかった。真っ白で開放的で陽の光がたくさん入り、ここから新しいものを発信しているという感じがした。説明会でもらった資料に載っていた光景を自分の目でみることができたことにも感動した。(高校1年生)

-日本人留学生との会談

留学した時期にしても、こんな進路もあるのかと非常に参考になりました。高校から直接進学することや、長時間留学することが厳しかったりしてもこんな形で、自分でハードルを少しでも自分にあった高さにすることが出来るのだと目から鱗が落ちました。(高校2年生)

-その他

分からないことを聞きたくても英語で上手く伝えきれないことがあり、自分の英語の出来なさを実感し、印象深い3日間となりました。(高校1年生)

私はツアーに参加して、自分の将来への視野とか物事の考え方がぐんっと広がったし、今の大学での勉強に対する意欲がすごく強くなった。(大学1年生)

Q. あなたの前に次回参加するかもしれない人がいたとして、どんなふうにツアーを紹介しますか?

  • 自分の将来の可能性を広げるためにも、絶対参加した方がいい‼
  • すべての経験があなたを形作って行きます。たとえ将来あなたがどんな選択をすることになってもここでの経験はきっと役に立ちます。学ぶためには失敗も必要です。若い今しか感じ取れない体験をしたいとは思いませんか?
  • 理系でよかった、理系好きだって思えるチャンス!ツアーがおわってからもきっとつながっていられる仲間ができる。
  • プログラムの仲間やアメリカの大学生、社会人と関わり、相手を知る事で、より自分を深く知る事ができると思います。普段向き合う事の少ない自分自身やその将来とプログラムを通して向き合うことで、将来やりたい事をアメリカで見つけられるかもしれません。


帰国後の成田空港で。
彼女たちをここまでドライブしたプログラム内容はどんなものだったのかは、今後のエントリーをお楽しみに!現地でたくさん収めた写真や動画も公開していこうと思います。

また、私も初めて現場に触れた「工学教育 Engineering education」は、単純に理系の教育という以上に非常に意義深いものでした。こちらについても場を改めて記事にしていきたいと考えています。

乞うご期待!

長井

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